国立公園とは

 日本を代表する優れた自然景観を持ち、その保護と適切な利用を進めていくべき地域として、法律によって定められた地域です。
 街中にあるような公園と違い、数万ヘクタールに及ぶ「地域全体」が公園となっています。
 国内には、北は北海道、南は沖縄に至るまで、34か所の国立公園が指定(令和6年3月現在)されています。

 日本の代表的な自然保護エリアとしても知られており、景観のみならず、特徴的な生態系が保全され、様々な動植物の生息地にもなっています。
 昔から観光地・保養地として知られ、登山人気の高い山があったり、質の高い温泉や宿泊施設があるところも多いです。

 一言でいうと、「国が認めるほど、とてもいいところ」ということになります。

参考:日本の国立公園(環境省ウェブサイト)

阿寒摩周国立公園の特徴

◆指定 昭和9年12月4日

令和6年に90周年を迎えます。日本の国立公園の「第一期生」です。
道内では大雪山国立公園が、道外では中部山岳や瀬戸内海、雲仙天草国立公園などが同級生になります。なお、指定当初は「阿寒国立公園」でしたが、平成29年8月8日に現在の名前に変更になりました。

◆面積 約91,413ha(陸域)

湖面も含めれば10万haを超えます。東京ドーム(4.7ha)を2万個作ってもまだ余裕があります。
11の市町(釧路市、網走郡大空町、美幌町、津別町、斜里郡清里町、小清水町、足寄郡足寄町、川上郡標茶町、弟子屈町、白糠郡白糠町、標津郡中標津町)にまたがっています。

阿寒摩周国立公園区域図(環境省提供資料より)


◆指定理由 ~火山、森、湖が織りなす豊かな原生的景観~

昭和11年、国立公園指定から間もないころに、日本の国立公園の父:田村剛博士の監修のもと発行された「日本の国立公園(大正日日新聞刊)」においては、次のように記されています。

「要するに本公園は火山系統に属する風景地として、我が國の風景を代表せしむるに足るものであつて、山岳、森林、湖沼の配置頗る妙を極めた本邦稀有の美しい原始境であると云ふを得べく、地學、動植物學上の興味頗る大である」

この観点は、今も変わっていません。環境省の「阿寒摩周国立公園 公園計画書」においては、

「火山と森と湖が織りなす豊かな原生的景観を有する」

と、表現こそ易しくなっていますが、意味するところは変わりません。

阿寒摩周国立公園には阿寒、屈斜路湖、摩周の3つのカルデラが連なっています。
カルデラと言うのは火山活動の結果、地面が陥没してできあがった地形です。つまり、かつては火山活動が非常に活発だったことを意味します。
近年では地形が変わるほどの火山活動はありませんが、雌阿寒岳や硫黄山(アトサヌプリ)など、4つの活火山が座しています。
とても迫力のある山様や方々で立ち上る噴気、これが魅力の一つです。

また、この地域一帯は森林に覆われ、標高の低い場所にはトドマツやミズナラ等からなる針広混交林が、標高が上がっていくとトドマツ、エゾマツ等からなる針葉樹林が発達します。山に登って見渡せば、北海道ならではの亜寒帯林が眼下に広がっています。これも魅力です。

そして、湖。阿寒湖、屈斜路湖、摩周湖はいずれも大きなカルデラ湖。さらにオンネトーやパンケトー、神の子池をはじめ、大小の湖沼が見られます。その景観は見事で、例えば摩周湖は「摩周ブルー」、オンネトーは「五色沼」などと、絶妙な色合いが称えられています。これもまた魅力です。

カルデラの外輪に位置する火山、その裾野に広がる森林、その中にたたずむ湖水、これら3つの魅力が織りなす光景は、思わず息を呑んでしまうほどです。まさに、日本を代表する自然景観、自然環境がそこにあるわけです。

それが、この地域が国立公園に指定された理由です。

保護規制

優れた自然が残っているからこそ、きちんと守っていかなければいけません。そのためには、自然環境に影響を与えるような開発を規制していく必要があります。
しかし一方で、日本は国土が狭く、あちこちで林業や漁業などが営まれています。温泉地では温泉宿なども設けられています。本州以南では、いわゆる「里山」など、人の活動を前提として成り立っている自然環境もあります。こういったことを無視して、すべての人為を排除するというわけにもいきません。

そこで日本の国立公園では、かなり古くから「ゾーニング」を行ってきました。原生的な自然が残っている場所は強い規制をかけて保護する。林業を行っている山の裾のなど、人の利用があるとことでは、自然環境の保全を前提にしつつ、ある程度の産業も行えるようにする。そういう形で対応してきたわけです。
その考え方を図にすると、以下のようになります。

国立公園の保護規制の概念図(環境省提供資料より)

阿寒摩周国立公園でも同様に、雄阿寒岳や雌阿寒岳、阿寒湖のマリモ生育地、摩周湖などは「特別保護地区」として厳格な規制が敷かれ、温泉街周辺や外輪山の裾野などは「特別地域」として、保護と地域産業とのバランスがきちんと保たれるように制度が適用されています。

<参照>自然公園法による国立公園内の主要な規制
第20条第3項(特別地域内の規制)
第21条第3項(特別保護地区内の規制)
第22条第3項(海域公園地区の規制)
第33条第1項(普通地域の届出対象等)
※規制内容の詳細については環境省の各自然保護官事務所へお問い合わせ下さい。

阿寒摩周国立公園利用のルール・マナー

阿寒摩周国立公園は、皆様のご協力のもとで美しい姿を保っています。素晴らしい自然を守り、後世に残してい くためにも、ルールやマナーを守りながら楽しんでください。
※規制の詳細については、環境省の各管理官事務所へお問合せください。

 
 〇生物の採取( 釣りは除く)や損傷(踏みつける、折る等のこと)はご遠慮ください。
 雌阿寒岳・雄阿寒岳といった山岳エリア、阿寒湖北部、オンネトー湯の滝、摩周湖等では、あらゆる動植物の採取が禁止されています。
 その他の地域でも希少植物の多くが採取禁止になっています。(なお、地衣類やキノコも法令上植物として扱われます)

 〇勝手に人工物を設置・建造することも禁止されています。
 大規模なものだけでなく、小さな看板設置やキャンプ場といった指定地外でのテント設営など小規模なものも対象です。
 
 〇土砂や鉱物の採掘など地形に変化をもたらす行為も禁止です。

 〇広い範囲で、道路や駐車場外への車両(軽車両やスノーモビル等含む)の乗入れが禁止されています。
 動力船の乗入れが禁止されている湖沼も多数あります。うっかり乗入規制区域に入らないように注意して下さ
 い。

 〇野外にゴミを残してはいけません。自然に還りそうなものでも、きちんと持ち帰りましょう。

 〇登山道から外れないようにしましょう。踏みつけによる植生被害や道迷いを招かないために。

 〇登山靴やスパッツは、自宅でキレイにしてから入山を。山岳への外来植物種子の持ち込み防止に非常に効果的  です。
 
 〇野生動物への餌付けはご遠慮ください。
 動物の生態に影響を与えないためと、人畜共通感染症(病気や寄生虫)を貰わないために。

 〇ヒグマや悪天候など、野外には危険も潜んでいます。
 十分な装備と情報収集を心がけ、少しでも被災のリスクを低めるよう努力しましょう。

阿寒湖パークボランティア

阿寒摩周国立公園阿寒地域において、阿寒湖畔ビジターセンターでの自然観察会等の解説活動や湖岸美化清掃、利用施設の簡単な維持修理など、多岐にわたる活動を行っています。現在は環境省のボランティア養成講座を受講した約40名程のパークボランティアが、阿寒の自然を守るため日々活動しています。 
なお、パークボランティアの募集は、常時行われているものではなく、ボランティアの増員が必要な場合などに行っています。